ぶらくり会28年3月例会報告
ぶらくり会28年3月例会報告
開催日時:3月16日(水)午後6時30分~午後8時
開催場所:神戸市産業振興センター 406会議室
講 師:宮部 真衣(みやべ まい)様
和歌山大学システム工学部 デザイン情報学科 講師

(略歴)
・2003年4月 和歌山大学システム工学部デザイン情報学科 入学
・2006年3月 和歌山大学システム工学部デザイン情報学科 退学(飛び級のため)
・2006年4月 和歌山大学システム工学研究科博士前期課程 入学
・2008年3月 和歌山大学システム工学研究科博士前期課程 修了
・2008年4月 和歌山大学システム工学研究科博士後期課程 入学
・2011年3月 和歌山大学システム工学研究科博士後期課程 修了
・2011年3月 博士(工学)
・2011年4月~2013年4月 東京大学知の構造センター 特任研究員
・2013年5月~2015年3月 京都大学学際融合教育研究推進センターデザイン学ユニット 特定研究員
・2015年4月~和歌山大学システム工学部 デザイン情報学科 講師
講演テーマ:①Twitter上の流言(デマ)に関する研究
②多言語医療受付支援システム(外国人患者への多言語サポート)に関する研究
③認知症の早期発見に関する研究
出席者数25名
今月の例会は、和歌山大学システム工学部において、完璧ではない情報技術をいかに有効活用するかとの観点から、人を手助けする情報システムについて研究されている宮部真衣先生を講師にお迎えして講演をして頂きました。
なお、講師のご専門は「ヒューマンコンピューターインタラクション」、「コンピューターを使ったコミュニケーション支援」とのことです。
インタラクションとは、ネットで検索すると、「システムと人間との間で行われる能動的な情報のやり取りのことを指します。
具体的には、対話形式でシステムの制御を行ったり、入力データの内容でレスポンスが自動的に切り替わるなど、最適な情報を得ることができます。」とあります。
ご講演では、我々にも理解できるよう平易な表現で丁寧にご説明頂きましたのでその概要を以下に報告します。
まず、Twitter上の流言(デマ)に関する研究からお話して頂きました。
今、世の中は、コンピューターにより非常に便利になっています。例えば、自宅で居ながらにして電子メール等で情報を収集・発信出来ますし、銀行の預貯金は窓口に行かずにATMで自由に出し入れ可能です。列車の座席指定もネットで出来ますし、図書館では読みたい本、借りたい本を検索によって容易に見つけ出すことが出来ます。
また、Twitter、Facebook、mixi、ブログ等のソーシャルメディアを利用して誰でも手軽に情報を発信し受信出来る環境になっています。
然しながら、この手軽さが、時として問題を生み流言の温床になっているのではないかと講師は指摘されます。
2011年3月の東日本大震災の際には、様々な情報が流れたとのことですが、中には真偽の判断が難しいものや、信頼性に疑問のある情報あるいは流言と思われるものもあったそうで、講師はこのことをきっかけに情報共有に関する研究を始めたそうです。
そして講師は、2012年6月「流言情報クラウド(Rumor Cloud)」を立ち上げ、流言に関する情報を収集し、ユーザーの流言拡散防止を支援するサービスを提供されています。
一度以下のサイトにアクセスしてみてください。今週の流言ランキング、これまでの流言ランキング等が検索出来ます。
「流言情報サイト」(http://mednlp.jp/~miyabe/rumorCloud/rumorlist.cgi)
次に、多言語医療受付支援システム(外国人患者への多言語サポート)に関する研究についてお話して頂きました。
このシステムは2005年11月に開発に着手されたそうですが、開発の背景としては、もし自分が言葉の伝わらない環境、例えば海外旅行中に交通事故等のトラブルにあったら、どのような治療がされるのか、治療費はどうなるのか、保険はきくのか、入院するのか等々多くの不安要素を想定したからだそうです。
特に最近は、多くの外国人旅行者が来日してきていますが、日本語を話せない外国人患者と医療者の対話を助けるため「多言語医療受付システムM3(エムキューブ)」というシステムが開発されました。そしてこのシステムは2006年に試用し看護師、医療通訳者の意見を聞いたうえで改良を加え、2007年9月京都市立病院、2009年2月京大病院、2011年6月には東大病院に設置されるまでになり活用されているそうです。ネットで「多言語受付支援システムM3」を検索してみてください。
最後に、認知症の早期発見に関する研究について講演頂きました。
日本においては65歳以上の高齢者の4人に1人が認知症またはMCI(軽度認知障害)と言われているそうで、今や他人事ではありません。
認知症は、進行を遅らせること、将来のことをゆっくりと考える時間がもてることから早期診療、早期発見が重要と言われています。しかしながら、認知症の疑いのある人自身が受診を嫌がることが多く、医療機関の受診までに平均9.5ヶ月、確定診断までに平均15ヶ月かかっているそうです。
そこで、従来の診断方法での課題(専門的、コストがかかる、侵襲性がある)をクリアし、手軽に症状の兆候を把握できないかということで、講師は、音声認識を用いた「言語能力測定システム“言秤(コトバカリ)”」を提案され、京都市の複合ケア施設で認知症相談会で提案システムを試用され、2015年4月には医学会総会でブース展示されたそうです。
言語能力を測定するものとして、あることを表現するのにどれだけ同じ語彙を使用しないで表現できるか(TTR)、同じことを表現するのにどれだけ難易な語彙を使用できるか(JEL)、どれだけ丁寧な表現ができるか(PLT)、地名、数詞、固有名詞等を使ってどれだけ具体的な表現ができるか(NER)等、全部で6つの指標を採用されているそうです。
そして、この音声認識システムにより5名の協力者の50データを利用して言語能力の測定可能性を検証されました。
具体的には、収録した音声を人の手で書き起こした正解データと、2つの異なる音声認識システムによる認識結果をTTR指標で比較したところ、5人の協力者のTTRスコアは正解データと中程度の相関が見られたとのことでした。
現段階では、TTRに関していえば、同じ発話者(被測定者)の継続的な記録によってスクリーニングや自己ケアは可能であり、状態維持のチェックや状況の改善効果の確認は可能であるとのことでしたが、1回のみの測定で認知症あるいはMCIをスクリーニングすることは困難とのことでした。
今後は一般ユーザーでもこのシステムが有効に使えるよう努力されているとのことでしたので講師の今後の研究に期待したいと思います。
「言語能力測定システム“言秤(コトバカリ)」もネットにアップされていますので検索してみてはいかがでしょうか。
ぶらくり会世話人 平林 義康(大学20期)
開催日時:3月16日(水)午後6時30分~午後8時
開催場所:神戸市産業振興センター 406会議室
講 師:宮部 真衣(みやべ まい)様
和歌山大学システム工学部 デザイン情報学科 講師

(略歴)
・2003年4月 和歌山大学システム工学部デザイン情報学科 入学
・2006年3月 和歌山大学システム工学部デザイン情報学科 退学(飛び級のため)
・2006年4月 和歌山大学システム工学研究科博士前期課程 入学
・2008年3月 和歌山大学システム工学研究科博士前期課程 修了
・2008年4月 和歌山大学システム工学研究科博士後期課程 入学
・2011年3月 和歌山大学システム工学研究科博士後期課程 修了
・2011年3月 博士(工学)
・2011年4月~2013年4月 東京大学知の構造センター 特任研究員
・2013年5月~2015年3月 京都大学学際融合教育研究推進センターデザイン学ユニット 特定研究員
・2015年4月~和歌山大学システム工学部 デザイン情報学科 講師
講演テーマ:①Twitter上の流言(デマ)に関する研究
②多言語医療受付支援システム(外国人患者への多言語サポート)に関する研究
③認知症の早期発見に関する研究
出席者数25名
今月の例会は、和歌山大学システム工学部において、完璧ではない情報技術をいかに有効活用するかとの観点から、人を手助けする情報システムについて研究されている宮部真衣先生を講師にお迎えして講演をして頂きました。
なお、講師のご専門は「ヒューマンコンピューターインタラクション」、「コンピューターを使ったコミュニケーション支援」とのことです。
インタラクションとは、ネットで検索すると、「システムと人間との間で行われる能動的な情報のやり取りのことを指します。
具体的には、対話形式でシステムの制御を行ったり、入力データの内容でレスポンスが自動的に切り替わるなど、最適な情報を得ることができます。」とあります。
ご講演では、我々にも理解できるよう平易な表現で丁寧にご説明頂きましたのでその概要を以下に報告します。
まず、Twitter上の流言(デマ)に関する研究からお話して頂きました。
今、世の中は、コンピューターにより非常に便利になっています。例えば、自宅で居ながらにして電子メール等で情報を収集・発信出来ますし、銀行の預貯金は窓口に行かずにATMで自由に出し入れ可能です。列車の座席指定もネットで出来ますし、図書館では読みたい本、借りたい本を検索によって容易に見つけ出すことが出来ます。
また、Twitter、Facebook、mixi、ブログ等のソーシャルメディアを利用して誰でも手軽に情報を発信し受信出来る環境になっています。
然しながら、この手軽さが、時として問題を生み流言の温床になっているのではないかと講師は指摘されます。
2011年3月の東日本大震災の際には、様々な情報が流れたとのことですが、中には真偽の判断が難しいものや、信頼性に疑問のある情報あるいは流言と思われるものもあったそうで、講師はこのことをきっかけに情報共有に関する研究を始めたそうです。
そして講師は、2012年6月「流言情報クラウド(Rumor Cloud)」を立ち上げ、流言に関する情報を収集し、ユーザーの流言拡散防止を支援するサービスを提供されています。
一度以下のサイトにアクセスしてみてください。今週の流言ランキング、これまでの流言ランキング等が検索出来ます。
「流言情報サイト」(http://mednlp.jp/~miyabe/rumorCloud/rumorlist.cgi)
次に、多言語医療受付支援システム(外国人患者への多言語サポート)に関する研究についてお話して頂きました。
このシステムは2005年11月に開発に着手されたそうですが、開発の背景としては、もし自分が言葉の伝わらない環境、例えば海外旅行中に交通事故等のトラブルにあったら、どのような治療がされるのか、治療費はどうなるのか、保険はきくのか、入院するのか等々多くの不安要素を想定したからだそうです。
特に最近は、多くの外国人旅行者が来日してきていますが、日本語を話せない外国人患者と医療者の対話を助けるため「多言語医療受付システムM3(エムキューブ)」というシステムが開発されました。そしてこのシステムは2006年に試用し看護師、医療通訳者の意見を聞いたうえで改良を加え、2007年9月京都市立病院、2009年2月京大病院、2011年6月には東大病院に設置されるまでになり活用されているそうです。ネットで「多言語受付支援システムM3」を検索してみてください。
最後に、認知症の早期発見に関する研究について講演頂きました。
日本においては65歳以上の高齢者の4人に1人が認知症またはMCI(軽度認知障害)と言われているそうで、今や他人事ではありません。
認知症は、進行を遅らせること、将来のことをゆっくりと考える時間がもてることから早期診療、早期発見が重要と言われています。しかしながら、認知症の疑いのある人自身が受診を嫌がることが多く、医療機関の受診までに平均9.5ヶ月、確定診断までに平均15ヶ月かかっているそうです。
そこで、従来の診断方法での課題(専門的、コストがかかる、侵襲性がある)をクリアし、手軽に症状の兆候を把握できないかということで、講師は、音声認識を用いた「言語能力測定システム“言秤(コトバカリ)”」を提案され、京都市の複合ケア施設で認知症相談会で提案システムを試用され、2015年4月には医学会総会でブース展示されたそうです。
言語能力を測定するものとして、あることを表現するのにどれだけ同じ語彙を使用しないで表現できるか(TTR)、同じことを表現するのにどれだけ難易な語彙を使用できるか(JEL)、どれだけ丁寧な表現ができるか(PLT)、地名、数詞、固有名詞等を使ってどれだけ具体的な表現ができるか(NER)等、全部で6つの指標を採用されているそうです。
そして、この音声認識システムにより5名の協力者の50データを利用して言語能力の測定可能性を検証されました。
具体的には、収録した音声を人の手で書き起こした正解データと、2つの異なる音声認識システムによる認識結果をTTR指標で比較したところ、5人の協力者のTTRスコアは正解データと中程度の相関が見られたとのことでした。
現段階では、TTRに関していえば、同じ発話者(被測定者)の継続的な記録によってスクリーニングや自己ケアは可能であり、状態維持のチェックや状況の改善効果の確認は可能であるとのことでしたが、1回のみの測定で認知症あるいはMCIをスクリーニングすることは困難とのことでした。
今後は一般ユーザーでもこのシステムが有効に使えるよう努力されているとのことでしたので講師の今後の研究に期待したいと思います。
「言語能力測定システム“言秤(コトバカリ)」もネットにアップされていますので検索してみてはいかがでしょうか。
ぶらくり会世話人 平林 義康(大学20期)
