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ぶらくり会26年7月例会「住みたいまち、訪れたいまちを目指して」報告

ぶらくり会26年7月例会報告
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開催日時:7月15日(火)午後6時30分~午後8時
開催場所:神戸市産業振興センター 801号室
講  師:山中 直義(やまなか なおよし)様
阪急電鉄㈱ 広報部長
講演テーマ:「住みたいまち、訪れたいまちを目指して」
出席者数:19名

7月度のぶらくり会例会は阪急電鉄㈱の広報部長・山中直義様を講師にお迎えし、小林一三が阪急電鉄を創設して以来100年を超える歴史のなかで阪急は如何に地域に根付いた戦略を展開してきたか、また今後はどのような取り組みをして「住みたいまち、訪れたいまち」づくりをしていくのかについてお話を伺いました。

以下は当日のご講演の概要であります。なお、聞き漏らした部分については、ネット等の情報にて補足しています。

ご講演は、日本の民営鉄道のビジネスモデルといわれる「小林一三モデル」は今後も継続できるのかとのお話からのスタートとなりました。

小林一三は当時の箕面有馬電気軌道の経営安定のために住宅地分譲、宝塚温泉、宝塚唱歌隊など多くの関連事業を展開し、その結果として鉄道事業との相乗効果をあげることができたとのことでした。

では、この小林一三モデルは今後とも継続できるのかと言えば、高度成長期のように沿線の土地の値上がりにより、開発者のメリットを享受できる図式は終了しているものの、今後は、沿線を大事にして、良質な住宅、商業施設、文化などを提供することにより、沿線の価値、ブランドを向上させ、沿線に住みたいと思う方、訪れたいと思う方を創出していくというモデルになってきていると。

つぎに、講演のテーマの一つである「住みたいまち」の形成に向けた取り組みについて、以下の3つのポイントで話して頂きました。

第一は、阪急西宮スタジアム跡地に2008年にオープンした西宮ガーデンズについてです。
西宮ガーデンズは、阪神間の豊かな自然環境との調和を施設コンセプトに造られたとのことで、入居店約260店舗は入れ替わりはあるもののオープン当初とかわらず営業しており売上はずっと好調を維持しているとのことでした。
高級志向の人の多い西宮や芦屋を商圏としていることやセレクトショップなどが出店していること、雰囲気のあるシネマコンプレックスが併設されていること、阪急電車西宮北口駅と直結していることと等が相まって良い結果を生んでいるのでしょうか。

第二は、京都本線の摂津市駅および西山天王山駅の2つの新駅についてであります。
まず、新駅整備によって駅へのアクセスが便利になり、公共交通の利便性が高まります。
それに加えて摂津市駅は、2010年に開業した日本初のカーボン・ニュートラル・ステーションとしてさまざまな環境施設が盛り込まれており、太陽光発電、LED照明、雨水利用や無水トイレなどの各種省エネ設備の導入によって当駅に起因するCO2を約50%削減、残りについては排出枠購入などの方法によって相殺しているとのことでありました。
また、西山天王山駅は、昨年末に開業したもっとも新しい駅ですが、これは京都縦貫道と交差しており、駅前広場からエレベータを利用して高速バス停留所に行き、宮津方面あるいは東京方面に行くことができるとともに、高速道路の駐車場まで車で来て、車の渋滞の激しい京都市内へは電車に乗り換えて移動することができるいわゆるパークアンドライド等を売りにしているとのことでした。

第三は、自宅から駅まで、駅から目的地までの利便性を高めることと駅周辺の放置自転車を減らすこと等を目的として自転車施策も手掛けているとのことでした。特にレンタサイクルを活用してもらうために、駐輪場より若干安いレンタサイクル料を設定して需要喚起を試みているそうです。
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つぎに、「訪れたいまち」の形成にむけた取り組みについてのお話です。
一つ目は、梅田のまちづくりについてです。高度経済成長期には鉄道沿線が成長し、旅客需要が増大したため、それに対応した輸送力確保が最大の課題になってきました。
そのため、ターミナル整備をし、それにより生じた土地を活用したオフィス、商業施設の整備に注力することになりました。
具体的には、1959年に梅田では阪急ビル(阪急百貨店)だけであったものが、1973年に梅田駅を移転・拡張した頃には阪急ビルが拡張され、阪急グランドビル(32階建)および阪急ターミナルビル(17階建)が新設されています。

また最近では、阪急百貨店(梅田阪急ビル)が建て替えを終えてグランドオープンし、グランフロント大阪も開業しました。
このように大きく変貌しつつある梅田地区の顔にふさわしい、洗練された空間に生まれ変わらせるとのコンセプトで、阪急梅田駅についても今年度末全面竣工を目指して、リファイン工事が実施されています。

阪急電鉄と阪神電鉄では、2022年の竣工を目指して、梅田1丁目1番地計画なるものをスタートしようとしているとのことでした。
その内容は、築50年を経過している阪神百貨店の入居する大阪神ビルと隣接する新阪急ビルを建替え、新たに高さ190m、地下3階、地上38階の超高層ビルにするというものだそうです。地下2階から地上9階は百貨店ゾーン、地上11階から38階はオフィスゾーン、また11階にはビジネス情報発信の場、多様な人材による交流の場等として活用するカンファレンスゾーンを整備する予定だそうです。
また、カンファレンスゾーンは、災害時には帰宅困難者の一時滞留スペースとしても活用することにしているとのことでした。

 二つ目は、観光旅客誘致のために観光名所の駅をリニューアルしたり観光特急「京とれいん」を運行したりといったことを実施しているとのことでした。
駅のリニューアルとしては、嵐山駅を古都京都の風情を感じてもらえるよう、懐かしく、どこかモダンな町屋風駅舎に模様替えし、駅前広場も待ち合わせはもちろん、記念撮影や憩いのひと時を過ごすのに最適な場所に生まれ変わらせたとのことでした。

 三つ目は、インバウンド促進、つまり訪日外国人旅行者の誘致にも力を入れているとのことでした。これには、外国人旅行者向けのツーリストパス(一定区間を何日か限定で何回でも乗降できるパス等)を発行したり、関空と京都間の割安のアクセス用切符を開発したり、阪急ツーリストセンター大阪・梅田や京都観光案内所を開設して、英語、中国語、韓国語等の外国語にも対応できる体制を整えたりしているとのことでした。

 阪急電鉄の運営する電車、各種の商業施設、アミューズメント施設は、他社の施設と比べると、どことなく上品な雰囲気を感じるのは、なぜでしょうか。
阪急電車の沿線に高級住宅地があり、そこに住む人々が利用するからでしょうか。阪急電鉄の経営戦略はよく知りませんが、もともとは鉄道を敷設して阪急電鉄の哲学でまちづくりを進めてきたことを考えれば阪急電鉄の社風のなせる業かもしれません。

 最後に、有川浩さんの小説「阪急電車」が映画化され、評判をよびましたが、それにまつわるエピソードを山中講師よりお聞きしましたのでご披露します。
映画「阪急電車-片道15分の奇跡-」の撮影に当たっては、今津線の通常の車両を止めることなく、撮影用の車両を臨時列車として運行したとのことで、営業しながらの撮影には一般のお客様のご協力が必要であり、撮影スタッフは大変苦労されたようです。

また、上映初日の舞台挨拶終了後に、山中講師(当時は運輸部長の立場でした)が阪急電車を代表して主演の中谷美紀さん(「軍師官兵衛」の妻・光役で大河ドラマに出演中)に記念品を贈ったそうです。後日、中谷さんから送られてきた直筆の入った丁重なる礼状に大変感激され、その礼状はサランラップに巻いて大切に保管しているそうです。
また、共演の南果歩さんのご主人である俳優の渡辺謙さんが撮影の見学にこられ、喫煙される渡辺さんが喫煙場所に困られている時に、事務所の応接室を提供されたそうですが、後日応接室を訪れた山中講師はその座られた椅子に座らせてもらえなかったとか。
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 今回のご講演は、私企業とはいうものの公共交通機関という限りなく公企業に近い阪急電鉄の経営に関するお話をお聞きすることができ、非常に有意義であったと思います。

ぶらくり会世話人  平林 義康(大学20期)

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