ぶらくり会28年5月例会「誰も知らない水族館の裏話」報告
ぶらくり会28年5月例会報告
開催日時:5月23日(月)午後6時30分~午後8時
開催場所:神戸市産業振興センター 403会議室
講 師:三吉 規央(みよし のりお)様
鹿児島市水族館公社職員(総務課 管理係)
(略歴)
・昭和47年広島市生まれ
・山口県立山口高等学校卒
・和歌山大学経済学部経済学科卒(45期)
講演テーマ:「誰も知らない水族館の裏話」
出席者数:19名
今月の例会は、柑芦会のメンバーとしては異色の職に就かれている三吉規央様を鹿児島よりお招きして、なかなか知りえない水族館の裏話を聞かせて頂きました。
予めご用意頂いたレジュメに沿ってその概要をご報告します。
そもそも水族館とは博物館のジャンルに属し、日本最初の博物館である上野の東京国立博物館の附属施設として開園した上野動物園において、1882年に「魚のぞき館」として開設されたのがルーツであります。
そして、1897年(明治30年)に神戸・和田岬の遊園地・和楽園に日本で最初の循環型水槽を備えた近代的な水族館が開設されました。
①かごしま水族館は須磨水族園の園長だった男が造った
その方は、吉田啓正さんという方で、水族館業界で1番か2番の存在だと自負されて
いたそうです。
吉田さんは、江ノ島水族館から須磨水族館に移り、1987年のリニューアル時に須磨水族園長として、1997年にはかごしま水族館オープンとともに初代館長に就任されましたが、講師によると勿体ないことに2年で退任されました。
江ノ島水族館とかごしま水族館は追われるようにしてやめられ、尊大な方であったが、水族館のグランドデザインに責任を持つことができ、展示コンセプトの商売人でもあったとのことで、一昨年の死の直後に予想もしなかったことで評価されることになります。
かごしま水族館の出口付近に「沈黙の水槽」と言われる生き物が全くいない水槽が展示されていますが、その脇に「沈黙の海」と題した吉田さんのメッセージが掲示されています。その内容は、人間による環境破壊により、海に魚や植物がいなくなったらどうなるだろうという問題提起をしている内容だとのことで、現在ネット上で話題になっています。
②沖縄から大阪が盗んだものを鹿児島が盗んだ
「盗んだ」とは穏やかではありませんが、内容はジンベエザメの捕獲方法、飼育方法に関することであります。
ジンベエザメは世界最大の魚ですが、おとなしくてとてもデリケートな魚だそうです。
関西の近隣では大阪・海遊館のジンベエザメが有名ですが、海遊館は沖縄のジンベエザメに関するノウハウを探り当て展示に漕ぎつけたそうですが、鹿児島はノウハウをわからないまま2回の失敗を経てやっと飼育、展示するに至ったそうです。1匹目は沖縄県の漁協から購入したが、現地での餌やりの際に、手網を一緒に誤って飲み込ませていたがために死に、鹿児島・佐多岬で捕獲した2匹目は糞詰まりで死んだそうです。
現在のかごしま水族館では、大阪・海遊館の獣医が集積したジンベエザメの飼育・展示に関するノウハウを入手したおかげで無事に飼育・展示出来ているそうですが、この獣医のノウハウは鹿児島を経て全世界に流れているそうです。
③生物学「御」研究所
「御」は「オン」と読みます。
昭和天皇も今上天皇も秋篠宮も皆さん生物学者であられます。
昭和天皇はヒドロ虫類の、今上天皇はハゼの、そして秋篠宮はなまずのそれぞれ研究者であられます。
生物学御研究所は皇居内にありますが、その名称は平成20年10月より今上天皇のご意向により生物学研究所と「御」の文字が削除されたそうです。なお、今上天皇は単に研究所と言われているとのことです。
講師は、平成15年に今上天皇がかごしま水族館にお立ち寄りになった際に、お話するチャンスがあったそうですが、事前にそのような機会がおとずれるなど思いもよらなかったため、せっかく話しかけられたが、緊張もあって、一言も発することが出来ず頭を下げてしまったそうです。なお水族館からは出版物を贈呈されている由。
④油断すると水族館の運営をよそに奪われる
水族館運営は、もともとは地方公共団体やその外郭団体が運営していたが、平成15年より指定管理者制度がスタートし、株式会社をはじめとした営利企業や財団法人、NPO法人等の法人その他の団体に包括的に代行させることが出来るようになりました。
須磨水族園は元々神戸市が運営していましたが、現在は南知多ビーチランド他2社が運営しています。また、東京のしながわ水族館は開館当初より、事業主体は品川区ですが運営は池袋のサンシャイン水族館を運営しているサンシャインエンタプライズであり、最近新設された京都・仙台と、リニューアルされた上越の水族館は初めから管理運営は民間委託だそうです。
このように水族館(博物館)では独立採算制を導入し、税金ではなく利用者の負担によって運営していこうというのが世界的な潮流になっているそうです。
なお、アメリカのアトランタ水族館は大企業がスポンサーとなって資金を出しているそうですし、メトロポリタン美術館は、金持ちがスポンサーとなってその運営資金を賄っているそうです。
⑤日本学術振興会(文科省管轄の外郭団体)の科学研究費助成事業、通称「科研費」
科研費には研究費本体以外に研究機関がもらえる間接費があるが、この研究費を海外旅行に費やし、間接費を私用につかう事務員まで発生する始末であり、世間に甘えた研究者と研究機関が多いそうです。
⑥イルカとクジラの新規捕獲を禁じられた水族館
世界動物園水族館協会(WAZA)の圧力により、日本動物園水族館協会(JAZA)がイルカとクジラの新規捕獲を禁じられたが、日本では古来より捕鯨の歴史があり、現在でも和歌山県の太地町だけでなく、日本各地でクジラを捕獲している現実があります。
⑦水族館では要らなくなった魚はどうしているか
なるべく他園館に融通したり、購入先に返却するのですが、それでも不要になった魚は「絞めて」いるそうです。
ただ、いまどきの若い職員は絞めることを嫌がるそうです。
講師の巧みな話術もありあっという間の1時間半でした。
6月半ばよりNHKのドラマ10で「水族館ガール」というさわやかな青春ドラマが
始まるそうですし、皆さん、奥様あるいはお孫さんとご一緒に今一度水族館に足を運んでみませんか。
最後に、講師から、九州に来られた際には是非「かごしま水族館」を訪ねて下さいと出席者全員に名刺を配って頂きましたので、「かごしま水族館」の住所および講師の所属部署等を以下に記します。
「いおワールド かごしま水族館」
公益財団法人 鹿児島市水族館公社
〒892-0814
鹿児島市本港新町3番地1
TEL(099)226-2233(代)
FAX(099)223-7692
総務部 管理係 三吉 規央 様
ぶらくり会世話人 平林 義康(大学20期)
開催日時:5月23日(月)午後6時30分~午後8時
開催場所:神戸市産業振興センター 403会議室
講 師:三吉 規央(みよし のりお)様
鹿児島市水族館公社職員(総務課 管理係)
(略歴)
・昭和47年広島市生まれ
・山口県立山口高等学校卒
・和歌山大学経済学部経済学科卒(45期)
講演テーマ:「誰も知らない水族館の裏話」

出席者数:19名
今月の例会は、柑芦会のメンバーとしては異色の職に就かれている三吉規央様を鹿児島よりお招きして、なかなか知りえない水族館の裏話を聞かせて頂きました。
予めご用意頂いたレジュメに沿ってその概要をご報告します。
そもそも水族館とは博物館のジャンルに属し、日本最初の博物館である上野の東京国立博物館の附属施設として開園した上野動物園において、1882年に「魚のぞき館」として開設されたのがルーツであります。
そして、1897年(明治30年)に神戸・和田岬の遊園地・和楽園に日本で最初の循環型水槽を備えた近代的な水族館が開設されました。
①かごしま水族館は須磨水族園の園長だった男が造った
その方は、吉田啓正さんという方で、水族館業界で1番か2番の存在だと自負されて
いたそうです。
吉田さんは、江ノ島水族館から須磨水族館に移り、1987年のリニューアル時に須磨水族園長として、1997年にはかごしま水族館オープンとともに初代館長に就任されましたが、講師によると勿体ないことに2年で退任されました。
江ノ島水族館とかごしま水族館は追われるようにしてやめられ、尊大な方であったが、水族館のグランドデザインに責任を持つことができ、展示コンセプトの商売人でもあったとのことで、一昨年の死の直後に予想もしなかったことで評価されることになります。
かごしま水族館の出口付近に「沈黙の水槽」と言われる生き物が全くいない水槽が展示されていますが、その脇に「沈黙の海」と題した吉田さんのメッセージが掲示されています。その内容は、人間による環境破壊により、海に魚や植物がいなくなったらどうなるだろうという問題提起をしている内容だとのことで、現在ネット上で話題になっています。
②沖縄から大阪が盗んだものを鹿児島が盗んだ
「盗んだ」とは穏やかではありませんが、内容はジンベエザメの捕獲方法、飼育方法に関することであります。
ジンベエザメは世界最大の魚ですが、おとなしくてとてもデリケートな魚だそうです。
関西の近隣では大阪・海遊館のジンベエザメが有名ですが、海遊館は沖縄のジンベエザメに関するノウハウを探り当て展示に漕ぎつけたそうですが、鹿児島はノウハウをわからないまま2回の失敗を経てやっと飼育、展示するに至ったそうです。1匹目は沖縄県の漁協から購入したが、現地での餌やりの際に、手網を一緒に誤って飲み込ませていたがために死に、鹿児島・佐多岬で捕獲した2匹目は糞詰まりで死んだそうです。
現在のかごしま水族館では、大阪・海遊館の獣医が集積したジンベエザメの飼育・展示に関するノウハウを入手したおかげで無事に飼育・展示出来ているそうですが、この獣医のノウハウは鹿児島を経て全世界に流れているそうです。
③生物学「御」研究所
「御」は「オン」と読みます。
昭和天皇も今上天皇も秋篠宮も皆さん生物学者であられます。
昭和天皇はヒドロ虫類の、今上天皇はハゼの、そして秋篠宮はなまずのそれぞれ研究者であられます。
生物学御研究所は皇居内にありますが、その名称は平成20年10月より今上天皇のご意向により生物学研究所と「御」の文字が削除されたそうです。なお、今上天皇は単に研究所と言われているとのことです。
講師は、平成15年に今上天皇がかごしま水族館にお立ち寄りになった際に、お話するチャンスがあったそうですが、事前にそのような機会がおとずれるなど思いもよらなかったため、せっかく話しかけられたが、緊張もあって、一言も発することが出来ず頭を下げてしまったそうです。なお水族館からは出版物を贈呈されている由。
④油断すると水族館の運営をよそに奪われる
水族館運営は、もともとは地方公共団体やその外郭団体が運営していたが、平成15年より指定管理者制度がスタートし、株式会社をはじめとした営利企業や財団法人、NPO法人等の法人その他の団体に包括的に代行させることが出来るようになりました。
須磨水族園は元々神戸市が運営していましたが、現在は南知多ビーチランド他2社が運営しています。また、東京のしながわ水族館は開館当初より、事業主体は品川区ですが運営は池袋のサンシャイン水族館を運営しているサンシャインエンタプライズであり、最近新設された京都・仙台と、リニューアルされた上越の水族館は初めから管理運営は民間委託だそうです。
このように水族館(博物館)では独立採算制を導入し、税金ではなく利用者の負担によって運営していこうというのが世界的な潮流になっているそうです。
なお、アメリカのアトランタ水族館は大企業がスポンサーとなって資金を出しているそうですし、メトロポリタン美術館は、金持ちがスポンサーとなってその運営資金を賄っているそうです。
⑤日本学術振興会(文科省管轄の外郭団体)の科学研究費助成事業、通称「科研費」
科研費には研究費本体以外に研究機関がもらえる間接費があるが、この研究費を海外旅行に費やし、間接費を私用につかう事務員まで発生する始末であり、世間に甘えた研究者と研究機関が多いそうです。
⑥イルカとクジラの新規捕獲を禁じられた水族館
世界動物園水族館協会(WAZA)の圧力により、日本動物園水族館協会(JAZA)がイルカとクジラの新規捕獲を禁じられたが、日本では古来より捕鯨の歴史があり、現在でも和歌山県の太地町だけでなく、日本各地でクジラを捕獲している現実があります。
⑦水族館では要らなくなった魚はどうしているか
なるべく他園館に融通したり、購入先に返却するのですが、それでも不要になった魚は「絞めて」いるそうです。
ただ、いまどきの若い職員は絞めることを嫌がるそうです。
講師の巧みな話術もありあっという間の1時間半でした。
6月半ばよりNHKのドラマ10で「水族館ガール」というさわやかな青春ドラマが
始まるそうですし、皆さん、奥様あるいはお孫さんとご一緒に今一度水族館に足を運んでみませんか。
最後に、講師から、九州に来られた際には是非「かごしま水族館」を訪ねて下さいと出席者全員に名刺を配って頂きましたので、「かごしま水族館」の住所および講師の所属部署等を以下に記します。
「いおワールド かごしま水族館」
公益財団法人 鹿児島市水族館公社
〒892-0814
鹿児島市本港新町3番地1
TEL(099)226-2233(代)
FAX(099)223-7692
総務部 管理係 三吉 規央 様
ぶらくり会世話人 平林 義康(大学20期)
