ぶらくり会29年3月例会報告
ぶらくり会29年3月例会報告
開催日時:3月22日(水)午後6時30分~午後8時
開催場所:神戸市勤労会館 406号室
講 師:1.尾久土正己(オキュウド マサミ)様
和歌山大学 評議員・観光学部・「教養の森」センター教授
2.佐藤祐介(サトウ ユウスケ)様
和歌山大学 地方創生推進事業(COC+)推進室/「教養の森」センター講師
講演テーマ:『和歌山大学の教養教育と地方創生プログラム』
出席者数 :23名
今月のぶらくり会は、小惑星探査機「はやぶさ」の地球への帰還を撮影され、和歌山大学協働教育センター(通称クリエ)のセンター長として活躍された尾久土正己先生と、この度北海道大学の研究員から和歌山大学の講師として着任された佐藤祐介先生に講師となって頂き、2012年に設置された「教養の森」センターで開講されている教養教育と、文部科学省の「知(地)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」に採択されて開設した「わかやま未来学副専攻プログラム」を通じて和歌山大学から優秀な学生を輩出しようとしている取り組みについてお話して頂きました。
教養教育については尾久土先生に、副専攻プログラムについては佐藤先生にそれぞれお話して頂きましたので、以下にその概要を報告します。
まず、「教養の森」センターで開講されている「教養の森」ゼミナールは、4学部の教員の指導のもと4学部の4学年だけでなく、社会人や留学生も参加し、最大で8回受講できるということであり、「日本一贅沢なゼミ」ということです。講義のテーマは毎回違うそうで、死、愛、科学、学力、経済、グローバル等々1つだけの答えがないテーマで開催されるそうで、教員同士のバトルも頻発するとのことです。具体的には、教養の森は6科目群からなり、学問とその総合性、宇宙とその神秘性、生命とその多様性、人間とその相関性、世界とその連動性、社会とその公共性、を考える講義をされるそうで、大学という場において出会うすべての学問の出発点とその到達点がこれらの科目群に含まれているとのことです。
さて、経団連が会員企業を対象に20年前から実施している「企業が求める人材」に関するアンケートで、企業が選考にあたって重視した点を25項目から5つ回答する設問では、10年間連続で「コミュニケーション能力」が第1位となり、以下5位までは順に「主体性」、「協調性」、「チャレンジ精神」、「誠実性」と不動であります。ただし、素人考えで企業が重視しそうな「専門性」、「学業成績」、「出身校」等の項目は下位にランキングされています。このような背景および経済連からの反論もあって、近年の文科省の文教政策、「経済学部不要→新学部に改組」、「教養不要→専門大学の設置」との文系、教養系教育軽視の発言はトーンダウンし、経済学部は不要といわなくなったそうです。
先が読めない現在、必要とされている人材は、専門分野以外の知識がほとんどないいわゆる「I型」人間ではなく、専門分野以外のさまざまな分野の知識を持っている「π型」人間ということですが、和歌山大学の「教養の森」センターでの教養教育はまさに「π型」人間を育てる豊かな教育システムではないかと思います。
和歌山大学では、学生の自主性・創造性を開拓し、個性的な大学を目指すとともに、地域社会との連携を目指して、政府や経済界の要請に先んじて、2001年にクリエを創り、2012年には「教養の森」センターを設置、2016年準必須科目として「わかやま未来学」を開講しております。そして、これらの活動の結果、クリエのソーラーカープロジェクトでは2015年の鈴鹿4時間耐久レース「エンジョイクラス」優勝、総合2位の快挙を、映像制作部門ではNHKのコンクールで2回の全国優勝も果たしておられることは皆さまご存じの通りです。
2012年に設置された「教養の森」センターには、様々な教養科目がありますが、2015年に文科省より大学版地方創生事業として「知(地)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」に採択されたこともあって、準必修科目である「わかやま未来学」と、地域に入って地域の人たちと学ぶ「わかやま未来学副専攻プログラム」が立ち上げられました。
特に、「わかやま未来学副専攻プログラム」では、和歌山県の深刻な地域課題解決に向け、近隣の大学、地方公共団体、県内企業、NPOなどとともに立ち上げた共同事業体「紀の国大学」のもと、各市町の抱える課題解決のため、学生が、実際に地域に出かけて地域の皆さんと出会い、地域の現状を把握し課題を発掘しているそうです。そして、学生たちは地域の皆さんと課題を共有しながら、大学と地域が持っている知を結びつけた新たな知を提供して、課題解決を模索しているとのことです。紀の国大学では、①ものをつくる(6次産業化)、②しごとをつくる(商品・技術開発)、③ひとをつなぐ(移住先進地の再興)、④まちをつくる(命と生活のインフラ)を4つの教育テーマに掲げ、現在では10の市町と連携しながらそれぞれの課題解決に取り組んでいるそうです。
和歌山大学では、尾久土先生や佐藤先生をはじめとした諸先生方の努力により、クリエや「教養の森」センターが立ち上げられ、優秀な学生が育ちつつあるところですが、今年4月よりこれら2つのセンターは、ユニットに変更されるとのことです。そして、キャリア教育を含めて「教養・協働教育部門」に改組されるようです。これは、前学長の2014年の教育活動宣言が3年で収束したことを意味します。大学でこのようなドラスティックな変更があっても、「豊かな教養と人間力を育てる」ため、新年度からも努力するとの尾久土先生、佐藤先生のお言葉がありましたので、我々OB・OGも先生方を物心両面で後押ししていきたいと思います。
ぶらくり会世話人 平林 義康(大学20期)





開催日時:3月22日(水)午後6時30分~午後8時
開催場所:神戸市勤労会館 406号室
講 師:1.尾久土正己(オキュウド マサミ)様
和歌山大学 評議員・観光学部・「教養の森」センター教授
2.佐藤祐介(サトウ ユウスケ)様
和歌山大学 地方創生推進事業(COC+)推進室/「教養の森」センター講師
講演テーマ:『和歌山大学の教養教育と地方創生プログラム』
出席者数 :23名
今月のぶらくり会は、小惑星探査機「はやぶさ」の地球への帰還を撮影され、和歌山大学協働教育センター(通称クリエ)のセンター長として活躍された尾久土正己先生と、この度北海道大学の研究員から和歌山大学の講師として着任された佐藤祐介先生に講師となって頂き、2012年に設置された「教養の森」センターで開講されている教養教育と、文部科学省の「知(地)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」に採択されて開設した「わかやま未来学副専攻プログラム」を通じて和歌山大学から優秀な学生を輩出しようとしている取り組みについてお話して頂きました。
教養教育については尾久土先生に、副専攻プログラムについては佐藤先生にそれぞれお話して頂きましたので、以下にその概要を報告します。
まず、「教養の森」センターで開講されている「教養の森」ゼミナールは、4学部の教員の指導のもと4学部の4学年だけでなく、社会人や留学生も参加し、最大で8回受講できるということであり、「日本一贅沢なゼミ」ということです。講義のテーマは毎回違うそうで、死、愛、科学、学力、経済、グローバル等々1つだけの答えがないテーマで開催されるそうで、教員同士のバトルも頻発するとのことです。具体的には、教養の森は6科目群からなり、学問とその総合性、宇宙とその神秘性、生命とその多様性、人間とその相関性、世界とその連動性、社会とその公共性、を考える講義をされるそうで、大学という場において出会うすべての学問の出発点とその到達点がこれらの科目群に含まれているとのことです。
さて、経団連が会員企業を対象に20年前から実施している「企業が求める人材」に関するアンケートで、企業が選考にあたって重視した点を25項目から5つ回答する設問では、10年間連続で「コミュニケーション能力」が第1位となり、以下5位までは順に「主体性」、「協調性」、「チャレンジ精神」、「誠実性」と不動であります。ただし、素人考えで企業が重視しそうな「専門性」、「学業成績」、「出身校」等の項目は下位にランキングされています。このような背景および経済連からの反論もあって、近年の文科省の文教政策、「経済学部不要→新学部に改組」、「教養不要→専門大学の設置」との文系、教養系教育軽視の発言はトーンダウンし、経済学部は不要といわなくなったそうです。
先が読めない現在、必要とされている人材は、専門分野以外の知識がほとんどないいわゆる「I型」人間ではなく、専門分野以外のさまざまな分野の知識を持っている「π型」人間ということですが、和歌山大学の「教養の森」センターでの教養教育はまさに「π型」人間を育てる豊かな教育システムではないかと思います。
和歌山大学では、学生の自主性・創造性を開拓し、個性的な大学を目指すとともに、地域社会との連携を目指して、政府や経済界の要請に先んじて、2001年にクリエを創り、2012年には「教養の森」センターを設置、2016年準必須科目として「わかやま未来学」を開講しております。そして、これらの活動の結果、クリエのソーラーカープロジェクトでは2015年の鈴鹿4時間耐久レース「エンジョイクラス」優勝、総合2位の快挙を、映像制作部門ではNHKのコンクールで2回の全国優勝も果たしておられることは皆さまご存じの通りです。
2012年に設置された「教養の森」センターには、様々な教養科目がありますが、2015年に文科省より大学版地方創生事業として「知(地)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」に採択されたこともあって、準必修科目である「わかやま未来学」と、地域に入って地域の人たちと学ぶ「わかやま未来学副専攻プログラム」が立ち上げられました。
特に、「わかやま未来学副専攻プログラム」では、和歌山県の深刻な地域課題解決に向け、近隣の大学、地方公共団体、県内企業、NPOなどとともに立ち上げた共同事業体「紀の国大学」のもと、各市町の抱える課題解決のため、学生が、実際に地域に出かけて地域の皆さんと出会い、地域の現状を把握し課題を発掘しているそうです。そして、学生たちは地域の皆さんと課題を共有しながら、大学と地域が持っている知を結びつけた新たな知を提供して、課題解決を模索しているとのことです。紀の国大学では、①ものをつくる(6次産業化)、②しごとをつくる(商品・技術開発)、③ひとをつなぐ(移住先進地の再興)、④まちをつくる(命と生活のインフラ)を4つの教育テーマに掲げ、現在では10の市町と連携しながらそれぞれの課題解決に取り組んでいるそうです。
和歌山大学では、尾久土先生や佐藤先生をはじめとした諸先生方の努力により、クリエや「教養の森」センターが立ち上げられ、優秀な学生が育ちつつあるところですが、今年4月よりこれら2つのセンターは、ユニットに変更されるとのことです。そして、キャリア教育を含めて「教養・協働教育部門」に改組されるようです。これは、前学長の2014年の教育活動宣言が3年で収束したことを意味します。大学でこのようなドラスティックな変更があっても、「豊かな教養と人間力を育てる」ため、新年度からも努力するとの尾久土先生、佐藤先生のお言葉がありましたので、我々OB・OGも先生方を物心両面で後押ししていきたいと思います。
ぶらくり会世話人 平林 義康(大学20期)




