ぶらくり会30年7月例会(第195回)報告
ぶらくり会30年7月例会(第195回)報告
開催日時:7月11日(水)午後6時30分~午後8時
開催場所:神戸市産業振興センター 801号室
講 師:垂水 千佳(たるみ ちか)様
NHK大阪放送局キャスター(2018年4月~)
(略歴)
福岡県北九州市出身
慶応義塾大学文学部卒業
NHK北九州放送局
NHK神戸放送局(2013年4月~2018年3月)
勤務後現在に至る
講演テーマ:「人前での上手な話し方」
出席者数 :24名
7月度のぶらくり会例会は、NHK神戸放送局の夕方の番組「ニュースKOBE発」で長らくキャスターを務められ、今年4月からは大阪放送局で気象キャスターの傍ら土曜日朝の「ウイークエンド関西」のレポーターとして活躍されている「垂水 千佳様」に講師となって頂き、「人前での上手な話し方」についてお話して頂きました。
ご講演頂いた以下の各項目についてその概略を報告します。
1. 呼吸法および母音の発音
2. 話し手が聞き手に与える3つの情報
3. 話が伝わる5か条
4. 話の組み立て方
5. 話し上手は聞き上手
6. 人前で緊張しないために
まず『呼吸法および母音の発音』ですが「横隔膜を下げて、肺をお腹の方に広げる」イメージが大切だそうです。
そして母音の発音の基本を教えて頂きました。
「あ」・・・リンゴをかじるときのような、あくびをするときのような口の形
「え」・・・「あ」から口をやや横に広げる、舌の真ん中から先が少し浮く
「い」・・・さらに横に広げる
「お」・・・「あ」の口の形を縦にして、唇を少し前に突き出す
「う」・・・「お」の形から唇を尖らせる、指1本分くらいはあけるように
なお、劇団四季ではいつも以下の発生訓練をしているとのことでした。
リトルマーメイドのセリフ「ほらみて、いいでしょう? 大切な宝物」の子音を取って、かつ抑揚を付けて母音だけで「おあいえ、いいえおう?あいえうあ あああおお」と。
次に、『話し手が聞き手に与える3つの情報』についてお話して頂きました。
3つの情報とは、「言語情報」、「聴覚情報」、「視覚情報」ですが、それぞれの情報の聞き手に与える影響力は7%、33%、55%であるとアメリカの心理学者メラビアンが研究と実験に基づき提唱したそうです(メラビアンの法則)。
人に話をするときには話の内容(構成を含む)=「言語情報」、話し方(声の大きさや抑揚等を含む)=「聴覚情報」、話し手の外見や態度(身だしなみ、表情、姿勢、仕草等を含む)=「視覚情報」が大切であることは理解できますが、その中でも「視覚情報」が大きなウエイトを占めていることは驚きであります。
人前で話をするときには、メラビアンの法則を念頭に取り組むことが必要でしょうね。
『話が伝わる5か条』とは、以下の5か条のことです。
その1.大きな声を出す
その2.スピードを変える
その3.間をあける
その4.声のトーンを変える
その5.わざと噛む
垂水様からは、星の王子さまの一節「いまぼくが見ているのは、単なる入れ物にすぎない 本当に大切なものは、このなかに入っている 目に見えない何かなんだ」を5か条のそれぞれを踏まえてナレーションをして頂きましたが、確かに、平坦に読み上げるのとは違って、心地よく聞くことが出来ました。
『話の組み立て方』では、番組造りに大いに活用している方法を紹介して頂きました。
通称「ペタペタ」と言っているそうですが、これはいわゆる「POST IT」カードに番組に関する項目、その内容等を何枚も記入し、壁や床に貼り付け、順番を入れ替えたりしてより良い番組作りのために活用しているそうです。
NHKの局内では結構行われているそうで、垂水様は今年の神戸ルミナリエを紹介する際に、今年のルミナリエ、震災とルミナリエ、震災を知らない世代の活躍というそれぞれの切り口で「ペタペタ」を活用して話の組み立てをされたそうです。
『話し上手は聞き上手』という言い回しはよく聞きますが、垂水様は「聞き上手の極意」として
以下の項目をあげられました。
あ・・・相手に興味を持つ
い・・・いい質問をする
う・・・うなづきと相槌
え・・・援護射撃
お・・・おしまいまで聞く
各項目について更に具体的なお話をして頂きました。
1 相手に興味を持つ
・内容としては、この人との会話から、何かを学びたい、新しい知識を得たい、経験談を聞きたい、この出来事をこの人ならどう感じるか、等々。
・相手の話に「傾聴」する、つまり耳を傾ける、心を傾ける。
2 いい質問をする
・「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」ではいい質問するとそれぞれ以下の効果が得られます。
・「オープンクエスチョン」では、話を広げたり、相手の気持ちや考えを引き出せる、話し手が自由に話せる、多くの情報が得られる。
・「クローズドクエスチョン」では、はい、いいえで答えられる、ものごとの結果をはっきり知りたいときに有効、ただし、この質問だけだと会話が途切れやすい。
・更に、妄想力、想像力を駆使し、あの手この手の質問をして相手から答えを引き出す。
3 うなづきと相槌
・相手への共感、オウム返し、言い換え等が効果的
4 援護射撃
・救け船を出す、相手を否定しないことも大切
5 おしまいまで聞く
・頭のいい人は、結論が見えてしまう、自分の知識を披露したくなるものですが、相手はただ単に言いたいだけ、聞いてほしいだけのケースもあるので、そこはぐっと我慢して「おしまいまで聞く」ことが大切
『人前で緊張しないために』・・・、誰でも人前で話をする時は緊張するものだと思いますが、場慣れした垂水様でも緊張をしないために以下の様なことをされているそうです。
・原稿をいったん忘れる
・早めに会場に入る
・味方を見つける・・・会場内には当方の話にいちいち頷いてくれたり、真剣に聞いてくれたり
する人が必ずいます(味方)。その人たちに向かって話しかけるように
することだそうです。
・気にしない・・・あれこれと悩まないことだそうです。
最後に、ご講演の中で、レポート制作に当っての裏話もいくつか披露して頂きましたのでご紹介します。
神戸放送局時代の垂水様は、スタジオを離れての取材も多く、学校を訪ねたり、スポーツの取材を行っていたそうです(サッカーのヴィッセル神戸やアイナック神戸レオネッサ、バンディオンセ加古川等)。
また、大相撲の取材も行っていたそうですが、特に芦屋市出身の貴景勝を幕内以前より応援されていたそうです。昨年の幕内昇進後に貴景勝にインタビューした際、「関取になって個室(一人部屋)になってよかったですね」と問いかけたところ、しばらく間をおいて「大部屋の方が良かった」との返事が返ってきたそうです。
理由を聞いてみると「個室にいるとお化けが出てきそうでこわい。大部屋がなつかしい。」と言ったそうです。人の話は「おしまいまで聞く」ことが大切であると実感したとのことでした。
現在、大阪放送局でご担当の「ウイークエンド関西」では、北九州放送局時代に取得した気象予報士の知識を駆使して、日常生活の中に気象に関することを織り込んだ放送をするように心がけているそうです。
ぶらくり会開催の週末(7月14日(土))の「ウイークエンド関西」では醤油発祥の地・湯浅町の醤油作りをレポートされていましたが、醤油作りには真夏の暑さが必要であることを「暑い夏としょうゆの深~い関係」というキャッチコピーを前面に出して説明されていました。
また、下打ち合わせの段階では、地元の方々が「田舎だから何もアピールするものがないと」と言われていたのを、垂水様は「妄想力」「想像力」を働かせ、あの手この手で質問をし、先付から水物まで醤油で作ったグルメツアーがあることを聞き出し、このグルメツアーが番組に取り入れられ放映されました。
垂水様の聴講生を引き付ける話術と快活な話しぶりは、TVキャスターという職業柄だけからではなく、常日頃より様々な工夫と研究を重ねられて結果であると大いに関心した次第です。
今回の講演をご縁に、垂水様のご活躍を応援していきたいと思っております。
皆様も、NHK大阪放送局の以下の番組で彼女の活躍ぶりを是非ご確認ください。
・「ウイークエンド関西」・・・土曜 午前7時30分~
・「正午前気象情報」 ・・・土曜 午後0時前
・「18時前気象情報」 ・・・火曜~金曜 午後5時57分~
以上
ぶらくり会世話人 柑芦会神戸支部 平林 義康(大学20期)


開催日時:7月11日(水)午後6時30分~午後8時
開催場所:神戸市産業振興センター 801号室
講 師:垂水 千佳(たるみ ちか)様
NHK大阪放送局キャスター(2018年4月~)
(略歴)
福岡県北九州市出身
慶応義塾大学文学部卒業
NHK北九州放送局
NHK神戸放送局(2013年4月~2018年3月)
勤務後現在に至る
講演テーマ:「人前での上手な話し方」
出席者数 :24名
7月度のぶらくり会例会は、NHK神戸放送局の夕方の番組「ニュースKOBE発」で長らくキャスターを務められ、今年4月からは大阪放送局で気象キャスターの傍ら土曜日朝の「ウイークエンド関西」のレポーターとして活躍されている「垂水 千佳様」に講師となって頂き、「人前での上手な話し方」についてお話して頂きました。
ご講演頂いた以下の各項目についてその概略を報告します。
1. 呼吸法および母音の発音
2. 話し手が聞き手に与える3つの情報
3. 話が伝わる5か条
4. 話の組み立て方
5. 話し上手は聞き上手
6. 人前で緊張しないために
まず『呼吸法および母音の発音』ですが「横隔膜を下げて、肺をお腹の方に広げる」イメージが大切だそうです。
そして母音の発音の基本を教えて頂きました。
「あ」・・・リンゴをかじるときのような、あくびをするときのような口の形
「え」・・・「あ」から口をやや横に広げる、舌の真ん中から先が少し浮く
「い」・・・さらに横に広げる
「お」・・・「あ」の口の形を縦にして、唇を少し前に突き出す
「う」・・・「お」の形から唇を尖らせる、指1本分くらいはあけるように
なお、劇団四季ではいつも以下の発生訓練をしているとのことでした。
リトルマーメイドのセリフ「ほらみて、いいでしょう? 大切な宝物」の子音を取って、かつ抑揚を付けて母音だけで「おあいえ、いいえおう?あいえうあ あああおお」と。
次に、『話し手が聞き手に与える3つの情報』についてお話して頂きました。
3つの情報とは、「言語情報」、「聴覚情報」、「視覚情報」ですが、それぞれの情報の聞き手に与える影響力は7%、33%、55%であるとアメリカの心理学者メラビアンが研究と実験に基づき提唱したそうです(メラビアンの法則)。
人に話をするときには話の内容(構成を含む)=「言語情報」、話し方(声の大きさや抑揚等を含む)=「聴覚情報」、話し手の外見や態度(身だしなみ、表情、姿勢、仕草等を含む)=「視覚情報」が大切であることは理解できますが、その中でも「視覚情報」が大きなウエイトを占めていることは驚きであります。
人前で話をするときには、メラビアンの法則を念頭に取り組むことが必要でしょうね。
『話が伝わる5か条』とは、以下の5か条のことです。
その1.大きな声を出す
その2.スピードを変える
その3.間をあける
その4.声のトーンを変える
その5.わざと噛む
垂水様からは、星の王子さまの一節「いまぼくが見ているのは、単なる入れ物にすぎない 本当に大切なものは、このなかに入っている 目に見えない何かなんだ」を5か条のそれぞれを踏まえてナレーションをして頂きましたが、確かに、平坦に読み上げるのとは違って、心地よく聞くことが出来ました。
『話の組み立て方』では、番組造りに大いに活用している方法を紹介して頂きました。
通称「ペタペタ」と言っているそうですが、これはいわゆる「POST IT」カードに番組に関する項目、その内容等を何枚も記入し、壁や床に貼り付け、順番を入れ替えたりしてより良い番組作りのために活用しているそうです。
NHKの局内では結構行われているそうで、垂水様は今年の神戸ルミナリエを紹介する際に、今年のルミナリエ、震災とルミナリエ、震災を知らない世代の活躍というそれぞれの切り口で「ペタペタ」を活用して話の組み立てをされたそうです。
『話し上手は聞き上手』という言い回しはよく聞きますが、垂水様は「聞き上手の極意」として
以下の項目をあげられました。
あ・・・相手に興味を持つ
い・・・いい質問をする
う・・・うなづきと相槌
え・・・援護射撃
お・・・おしまいまで聞く
各項目について更に具体的なお話をして頂きました。
1 相手に興味を持つ
・内容としては、この人との会話から、何かを学びたい、新しい知識を得たい、経験談を聞きたい、この出来事をこの人ならどう感じるか、等々。
・相手の話に「傾聴」する、つまり耳を傾ける、心を傾ける。
2 いい質問をする
・「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」ではいい質問するとそれぞれ以下の効果が得られます。
・「オープンクエスチョン」では、話を広げたり、相手の気持ちや考えを引き出せる、話し手が自由に話せる、多くの情報が得られる。
・「クローズドクエスチョン」では、はい、いいえで答えられる、ものごとの結果をはっきり知りたいときに有効、ただし、この質問だけだと会話が途切れやすい。
・更に、妄想力、想像力を駆使し、あの手この手の質問をして相手から答えを引き出す。
3 うなづきと相槌
・相手への共感、オウム返し、言い換え等が効果的
4 援護射撃
・救け船を出す、相手を否定しないことも大切
5 おしまいまで聞く
・頭のいい人は、結論が見えてしまう、自分の知識を披露したくなるものですが、相手はただ単に言いたいだけ、聞いてほしいだけのケースもあるので、そこはぐっと我慢して「おしまいまで聞く」ことが大切
『人前で緊張しないために』・・・、誰でも人前で話をする時は緊張するものだと思いますが、場慣れした垂水様でも緊張をしないために以下の様なことをされているそうです。
・原稿をいったん忘れる
・早めに会場に入る
・味方を見つける・・・会場内には当方の話にいちいち頷いてくれたり、真剣に聞いてくれたり
する人が必ずいます(味方)。その人たちに向かって話しかけるように
することだそうです。
・気にしない・・・あれこれと悩まないことだそうです。
最後に、ご講演の中で、レポート制作に当っての裏話もいくつか披露して頂きましたのでご紹介します。
神戸放送局時代の垂水様は、スタジオを離れての取材も多く、学校を訪ねたり、スポーツの取材を行っていたそうです(サッカーのヴィッセル神戸やアイナック神戸レオネッサ、バンディオンセ加古川等)。
また、大相撲の取材も行っていたそうですが、特に芦屋市出身の貴景勝を幕内以前より応援されていたそうです。昨年の幕内昇進後に貴景勝にインタビューした際、「関取になって個室(一人部屋)になってよかったですね」と問いかけたところ、しばらく間をおいて「大部屋の方が良かった」との返事が返ってきたそうです。
理由を聞いてみると「個室にいるとお化けが出てきそうでこわい。大部屋がなつかしい。」と言ったそうです。人の話は「おしまいまで聞く」ことが大切であると実感したとのことでした。
現在、大阪放送局でご担当の「ウイークエンド関西」では、北九州放送局時代に取得した気象予報士の知識を駆使して、日常生活の中に気象に関することを織り込んだ放送をするように心がけているそうです。
ぶらくり会開催の週末(7月14日(土))の「ウイークエンド関西」では醤油発祥の地・湯浅町の醤油作りをレポートされていましたが、醤油作りには真夏の暑さが必要であることを「暑い夏としょうゆの深~い関係」というキャッチコピーを前面に出して説明されていました。
また、下打ち合わせの段階では、地元の方々が「田舎だから何もアピールするものがないと」と言われていたのを、垂水様は「妄想力」「想像力」を働かせ、あの手この手で質問をし、先付から水物まで醤油で作ったグルメツアーがあることを聞き出し、このグルメツアーが番組に取り入れられ放映されました。
垂水様の聴講生を引き付ける話術と快活な話しぶりは、TVキャスターという職業柄だけからではなく、常日頃より様々な工夫と研究を重ねられて結果であると大いに関心した次第です。
今回の講演をご縁に、垂水様のご活躍を応援していきたいと思っております。
皆様も、NHK大阪放送局の以下の番組で彼女の活躍ぶりを是非ご確認ください。
・「ウイークエンド関西」・・・土曜 午前7時30分~
・「正午前気象情報」 ・・・土曜 午後0時前
・「18時前気象情報」 ・・・火曜~金曜 午後5時57分~
以上
ぶらくり会世話人 柑芦会神戸支部 平林 義康(大学20期)

